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「良かった。――来てくれないかと」 「違うの、調べ物をしていたらいつの間にか寝てしまって……ごめんなさい」 「大丈夫。君に会えただけで俺は満足!」  暗闇の中でも彼がにっこりと笑顔になったのが分かった。シャノンは苦笑いを返す。 「それはどうも。ところで、調べ直したのを見て欲しいんだけど……暗くて何も見えないわね」 「そうだねぇ、町まで戻ろうか」 「あなたは町の人なの?」 「んー、さぁどうだろうねぇ」  こっちだよ、とさりげなく手を握ってくるのを平然と払いつつ、シャノンは前を進むアイヴィーの月明かりにぼんやりと浮かぶ背中を眺めた。  なんとなく荒野に住んでいるのかと漠然と思っていた。荒野は住める場所なんてほとんど無いのに。  不思議な人。この人のことをもっと知りたい。  好奇心が駆り立てられる。謎めいた雰囲気のベールを剥ぎ取って、本当の彼がどんなものなのか知りたくなった。 「ねぇ、あなたは何をやってるの?」 「職業?」 「ええ」 「俺は学生だよ。長期休みだから滞在してる」 「そうなのね。歳は?」 「21だよ。何?取材?」  アイヴィーは笑い混じりに答える。 「ついそんな感じになっちゃったわ、職業病ね」 「別に構わないよ。じゃあ君のことも教えてくれない?」  急に隣から顔をのぞき込まれてぎょっとした。つい目を見開いてしまう。 「……そうね、何が聞きたいの?」 「君の年齢は?」 「24よ。あなたはなぜ戦争について詳しいの?」  近づいてきた町の明かりの中で彼は少し困ったような顔をして笑った。 「これはあんまり聞いて欲しくないなー」 「あら、ごめんなさい。色々知ってるから不思議に思って」  困った顔の彼に、シャノンはしれっと答えた。様々な人にインタビューをしているとこういうこともある。 「まぁ、だんだんね。君にはいずれ話さないとかなって思うから」 「なぜ?」 「さぁ、なんでだろうね」 「はぐらかさないでよ」  彼は軽く笑ったが、シャノンが何度聞いても結局なぜなのかは教えてくれなかった。さらに謎が深まる。  そんなやり取りをしているうちに町に着いた。
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