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『熊が出た』
学校でそんな噂を耳にした。俺、大神銀次(オオガミギンジ)の住む町は都会ではない、どちらかというと田舎だ。山もある事にはある、行ってみればタヌキやらイタチぐらいはもしかしたら見られるかもしれない。しかし、流石に「熊」はいないくらいの都会だ。昔から熊が出たなんてニュースはこの俺の住む地域には皆無だった。日本で熊が生息する地域はあるが、俺の地域は今までそうじゃなかったわけで、どっかの誰かが何かと見間違えて噂を流したのではないかと俺はそんな馬鹿らしい噂を思い出しながら月明かりに照らされた夜道を歩いていた。
黙々と自宅を目指していた俺は何年も前に閉鎖された工場跡の前を通りかかった。その時、辺りに「銃声」が鳴り響いた。
「銃声??」
音に驚いた俺は身体を震わせた。厳密には「銃声のような音」だ。銃声を俺は映画なんかでしか聞いた事は無いが、そう例えるのが一番適していると思った。狼が日本にいない事を常識とするならば、日本で銃声を聞く事は非常識で非常事態である。
「ここから聞こえたよな」
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