ep1美しくて、神々しくて、尊い

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「私、こうして人と話すのは長い間なかったのよ。 それに私は異能者。人ではない私は世間では忌み嫌われる存在。一昨日の逃走劇に大神君まで巻き込んでしまったし、大神君を異能者に変えてしまった。今日も不快な体験をしたのだって元を正せば私の責任なのに。私を嫌っても、文句は言えないのに大神君は今もこうして、私とおしゃべりをしてくれている。私にとって普通じゃなくて特別なの。大神君しかしてくれない事。それが私はとても嬉しいの」  鼓動は高まっているが、俺はカリストの話を黙って聞いていた。冷淡な表情を浮かべて、毒舌を吐いて、強気で人を寄せ付けたがらない様な性格だと思っていたが、誤解だった。そういえば一昨日の夜も俺の正当な評価をされない気持ちがわかると言っていた。異能者という事で世間から疎外されているカリスト自身がそうだったからだ。  カリストは続けて話し始める。 「今日だって本当は学校をサボった大神君を見たときは怒りなんかよりも早く会いに来てくれて嬉しいって思ったの」 「え?」  思わぬツンデレ具合に俺は間抜けな声を出した。 「昨日、大神君が家に帰ってから思ったのだけれど、あの廃神社は暇を潰せるものはないし、1日過ごしただけで、凄く退屈だったの。退屈で、寂しい。そう思ったのよ。何処へ行っても誰かが私を追いかける。そして私はそれから逃げて隠れる日々。大変だけど、退屈だった。けど、ずっと一人だったから寂しいとは思って無かった。いえ、違うわ。多分私は寂しいと思ってたのだけれど、一人が長過ぎてそれが寂しいということを忘れていたのよ。     
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