ep2 普通

4/57
119人が本棚に入れています
本棚に追加
/371ページ
 俺が、カリストに出会って1週間程経った。俺が普通では無くなってから1週間経った。周りは変わらず普通の世界が広がっている。カリストの追手に見つかる事もなければ、俺が異能者になった事を家族や友人、学校でもバレてはいない。しかし、俺には世界が変わって見える。変わったのは俺の身体と心境、世界は変わってはいないが俺の世界を見る視点が変わったのだろう。  俺はまだ冴えない頭をボリボリと掻きながら洗面台へと向かう。蛇口を捻ると思いの外、捻り過ぎたのか水が跳ねて、服にかかる。 「くそ..」  俺は蛇口に悪態をつきながら、ゆっくりと水圧を弱める。俺は顔を洗って顔をあげると目の前の鏡に映る自分を何気無く見た。そこには16年間ともにしてきた俺の姿が写っている。外見では至ってどこも変化していない。けれど、俺の身体は確実に変化している。  初めの身体のへんかは、嗅覚と聴覚の発達だ。聴覚の発達で周りの音が全て騒音となり、嗅覚の発達により全ての匂いをきつく感じて思い悩んだが、カリストの助けによって、今はそれらの能力は落ち着いている。カリストの言う通り、五感が俺の能力に追いついたのだろう。しかし、悩みは尽きないもので今は別の問題が浮上している。俺は部屋に戻るとベッドの脇にある目覚まし時計の残骸に目をやった。  俺はため息を一つ着くと、そそくさと制服に着替える。学校に行くにはまだまだ早い時間だが、早々に準備を済ませると台所で朝ごはんを物色する。俺は一通りの食料を紙袋に詰めると、家を出た。     
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!