119人が本棚に入れています
本棚に追加
自分の中でそう折り合いをつけると落ち着き、笑みを浮かべた。さっきまでビクビクしていた自分が酷く滑稽に思えてきたからだ。これで心置きなく帰れると出口の方向に足を向けた。その時、「ぴちゃっ」と小さな水溜りを踏んだ様な音がした。ふと足元を見ると俺の足元には広くに渡る水溜りがあった。黒い水溜り。いや、月明かりのおかげで本当の色までわかった。恐る恐る屈んだ俺はその黒い水溜りがなんなのかわかった。色は赤だ。つまりこれは..
"血溜まりだ"
そうわかった途端、俺は恐怖で情けない悲鳴を上げながら走り出していた。銃声ー、悲鳴ー、血溜まり。この工場跡ではやっぱり何かがあったんだ。
"怖い!怖い!怖い!なんなんだよあれ!!なんで血が..!!"
無我夢中でこの廃墟となった工場跡を駆け抜けた。さっきまで出ていた月明かりも雲に覆われ、いよいよ真っ暗になっていた。もう俺はどこを走っているのかがわからなくなっていた。つまづいたり転んだりしたが手足をバタつかせながらも走った。足を止めれば 死ぬ様な、そんな気がしていた。
その時、俺は何かにつまづいて派手に転んだ。感触があった。コンクリートやガラクタに転んだ感触ではない。柔らかくてそれなりに重量があるもの。俺は恐る恐るつまづいた原因のその何かに目を凝らした。暗くてよくわからないが、何かが横たわっている。そんな時、雲の切れ間から月明かりが差した。横たわる何かが月明かりに照らし出される。
そこには白髪の少女が横たわっていた。
最初のコメントを投稿しよう!