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フェイント
夏の始りは
蝉の声が教えてくれる
彼らだって子孫反映の為に
必死なのだろう
必死に生きているのであろう
素敵な事だ
素敵な事なんだけど
嫌いな訳では無いのだけど
私は蝉が
ビジュアル的に
無理だった
そんな彼らは
この時期、廊下に
沢山落ちている
仰向けで
落ちているのは
短い人生が終わった蝉だと
私は認識していた
『蝉さん、お疲れ様 』
私は、そんな事を思いながら
蝉の横を通り過ぎようとした
すると蝉は
ビビビ! ビビビ!!
ビビビ! ビビビー
と急に暴れだした
「にゃわー」
私は、蝉のフェイント攻撃に
謎の奇声を発してしまった
完全に
取り乱したぜ…
誰も見て居なかった事を願う
それからは蝉が
もっと無理になり
落ちている蝉を警戒しながら
横を通る様になった
そこで、私は学んだ事だがある
完全に死んでいる蝉は
手足をクロスにしているという事に
気がついたのだ
クロスにしてない奴は
まだ生きているのだ
騙されないぞ
私はダッシュで廊下を駆け抜けた
そして
振り返り
『お前はもう 死んでいる 』
そう言って
エレベーターに乗り込んだ
そんな夏の日
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