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青い空はどこまで続く
蝉の声と、猛烈な日差しが僕を起こす。
不快な目覚めとは裏腹に、窓からは抜けるような青い空とソフトクリームのような雲が僕の目を捉えた。
僕らをワクワクさせてくれる、夏休み初日という、魔法の言葉。
僕の家は海辺に建ち、南の窓を開ければ、風が磯の香りを運んでくれる。
この香りを嗅ぐと、僕はもう、居ても立ってもいられなくなり、すぐにでも浜辺に駆け出したい気分になるのだ。
だが、そこに至るまでは、長い長い道のりを経なければならない。
ラジオ体操を適当にやり、リーダーにカードに印鑑をついてもらう。
朝ごはんを食べる。
母ちゃんが、宿題をやるまでは、絶対に外出を許してくれないので、とりあえずワークだけは済ませる。たった、1時間ちょっとで終わるこの行程ですらもどかしいほど、夏休みというものは、いくら時間があっても足りないはずなのだ。
そろそろ、テツヤが僕を迎えに来るはずだ。
テツヤは、学校では禁じられているモリをたずさえてやってくる。
海のさかなをモリで突くためだ。
僕は、残酷なので、モリを使ったことはない。
テツヤの家はお父さんが漁師なので、そういった道具が倉庫に行けばすぐに持ち出せるのだ。
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