第一節 白色世界

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 「現状は、今度の任務に欠員がでたということだ。直ぐにメンバーを一名補充する必要があるが、次の適合者を待つ時間は残されていない」 斑鳩群長が、静かに言う。  その時、通信端末の連絡音が入る。  「伝達です。命は取り留めたものの状態は再起不能。同時に補充兵も確定いたしました。氏名は、天之宮蒼華。国籍日本、女性です」  女性隊員が、腰の装備品から通信端末を取りだすと復唱した。  「一般人ではないのか?」  斑鳩群長が、言う。  組織名機密なれど、現代秘密結社に属している能力者とのことです」  女性の隊員が、敬礼をして言った。  報告を受けて、女性隊員から視線を外すと無言の斑鳩群長は天を仰ぎ視た。  ――造られた我々とは違う〝先天的能力覚醒者〟か――    「行動を開始する」  斑鳩が、決意を新たに言う。  三名の姿は、最初から存在しなかったように何の痕跡も残さなかった。                     †  個性など必要としない建物。  杜鵑が入院する病院には働く者が少ないように思われた。  正確には移動した病棟が少なかったのだ。奇妙な事柄であったが、杜鵑は他の人間の会話の少なさや足音から、それを感じ取っている。  ――姉さんとの面会から、二日しか経っていないけど人の気配が少なくなっている気がする。どうしたんだろう?――  だが、杜鵑の一日に変化はなかった。  朝の主治医の回診と病棟内での検査。  いつもの日常。しかし杜鵑に理解できない不思議なことが一つあった。  自分が眠った後に、ベッドの周囲に置いてある小物の位置が違う時があるのだ。  愛用のオーディオプレーヤー、コップ、目が見えない杜鵑は置いた場所をはっきり記憶したまま眠りにつくのが習慣化している。最初は単なる思い違いかと思ったが、こうも続けざまに起こると人は人を疑うものだ。  二、三度、看護師の女性にこんな悪戯をしないでほしいと伝えたが、一向にその不思議な出来事は収まらない。不安はあったが姉が面会に来てくれれば解決すると杜鵑は思っていた。  そして、ある日不思議な夢を見る。
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