0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの……ここに座ってもいいですか」
私がこの予備校に通い始めて半年。初めて女子生徒に声をかけられた。
彼女はいかにも値がはりそうなワンピースを着て、手首にはたくさんのブレスレットが巻きつけられていた。こんなにもお洒落に気を使う予備校生がいるのかと、今日の自分の服装、シンプルなチェックのシャツと見比べて、私は戸惑いのまなざしで彼女を見上げた。
どうやら彼女は私の隣りの席に座りたいらしい。
「どうぞ……」
私はかけていたサングラスの位置を指で直すと、彼女から目をそらした。
「女の人がいて良かったです……」
「そうですね。ここは男子ばかりで……」
長い間人との接触を断ってきた私は、嘘くさい笑顔を顔の表面に貼りつけて答えていた。
最初のコメントを投稿しよう!