小百合さん

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   ここは理数系専門の少人数制予備校。全国に名の通った有名予備校とはカラーが違う。線路沿いの飲み屋街入り口にある小さな予備校だ。いくら理系女子が増えてきているとはいえ、わざわざここのような予備校に好んで来る女子は少ない。おそらく全生徒の一割もいないだろう。一般的な高校の教室の三分の二ほどの広さの講義室に女子は一人か二人。  私は思春期を迎えた中学の頃に人と関わるのを止めた。理由は、このブルーグレーのガラスが入ったウェリントン型のサングラス。  中学生になった頃、突然現れた右目下の青いあざだ。それを理由に、友人たちの心無い言葉に私の心はことごとく傷つけられた。そしてそれは私に、それまでの友だち付き合いは表面だけをさらりとなで合うだけのものであり、実は薄氷があっけなくひび割れてしまうほどにもろいものだと教えた。青あざ一つで、今まで信用してきたものに結果的に心をえぐられるという経験をたくさんした。
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