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午後1時40分にホテルのラウンジに到着した。すでに世話人の山村さんが来ていて、ラウンジの隅のテーブル席から合図する。
僕は母親と一緒に来た。今までも母親が付いてきている。相手も姑となる母親が見たいだろうからその方が良いと思っている。山村さんは母親の高校の同級生でその口利きで今回のお見合いが成立したという。
「山村さん、お世話になります。お忙しいところ、ありがとうございます」
「今日、東京からいらしたそうですね」
「朝、東京を出て11時過ぎにこちらに着きました。新幹線ができて随分便利になりました」
「先方のお嬢さんも今日東京からこちらへこられるそうです。お母さまが体調不良とのことで、お父さまがここへ一緒にいらっしゃると聞いています」
見合いの相手は28歳で地元の有名進学校の出身で、東京の有名私立大学を卒業して東京で就職していると聞いていた。あとは会ってから聞けばいいと思っている。
僕の出した条件はクリヤーしていると母親から聞いている。もう5回目だから大体の見合いの要領は分かっている。
ここで両方の親を含めて少し話をして、場所を変えて二人で話をする手筈になっている。ここから少し離れた別のホテルのラウンジへでも行こうと思っている。
そのあとは山村さんにお付き合いをしたいかの意思表示を今日中にすれば良いことになっている。
自然体で臨もうと思っている。カッコつけてもしようがない。メッキはいずれ剥がれる。2時5分前に先方の父娘がラウンジに現れた。
相手の女性は新幹線のC席に座っていたあの美人の女性とすぐに気が付いた。着ていた服を覚えていたので遠目にも分かった。
こんなこともあるんだ! どおりで写真を見た時、どこかで見たように思った訳だ。近づくと山村さんが紹介してくれた。
「こちらが山野理奈さんです」
「はじめまして、山野理奈です」
「吉川亮です。新幹線でご一緒でしたね」
「そういえば、窓際の席におられましたか? どこかでお会いしたような気がしました」
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