2.お見合いした! 気に入った! 戦略に合致する!

4/4
前へ
/125ページ
次へ
「どうして結婚する気になったのですか?」率直に聞いてみた。 「この先の生活が不安です。ひとりで生きていくのが」 「それは収入の面ですか?」 「それもあります。給料が多くないのでゆとりがありません。ひとり暮らしの漠然とした不安もあります」 「それは僕も同じです。これからもずっと一人と考えると心配になります。漠然とした老後の不安かもしれません。歳も歳ですから、親も勧めるのでそろそろ身を固めた方がよいかと思っています」 「私も同じです」 それから、話題を変えて、同期の親しい友人から聞いた、例の経済学の分野で「秘書問題」や「裁量選択問題」と呼ばれる理論分析が、お見合いにも応用できると言う話をした。彼女は笑いながら頷いて聞いていた。 「もう何回か、お見合いをなさっているんですか?」 「想像に任せますが、これまでにない良い人と巡り会ったら決める時期と思っています。もちろん相手の気持ち次第ですが」 「良いお話を聞かせていただきました。参考になります」 1時間ほど話をしただろうか、これでお付き合いするか決めて山村さんに連絡すれば良いことになっている。 話をしていて分かることもあるが、分からないことの方が多い。会った時、話した時の印象で決めるしかないが、これだけ話をすれば十分だ。 「それじゃあ、これで」 「ありがとうございました」 挨拶をしてラウンジを出ると彼女はホテルの入口でタクシーに乗って帰っていった。 僕は歩いて実家へ帰った。歩きながらどうするか考えたが、答えは出ていた。例の理論分析にあてはめると、彼女はこれまでにない良い相手と思えた。 彼女に決めた方がいいというのが結論だ。もちろん彼女も望めばの話だ。交際してみよう! 家に着くと母親に彼女の感想を聞いた。好感を持ったから、僕次第だというので、交際の希望を山村さんに伝えてくれるように頼んだ。 その日の夕方、山村さんから先方がもう一度会いたいと言ってきているとの連絡が来た。 彼女と来週もう一度会うことになった。交際が決まったというより、その一歩前ということと理解した。 次回も再度地元でという希望なので了解した。でも、折角二人とも東京に住んでいるのに、これじゃあ、まるで遠距離恋愛みたいだ。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

908人が本棚に入れています
本棚に追加