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急いで革の胴鎧の脇についているベルトを締めている女傭兵の苛立ちの声にまたも起こされるベオの頭痛は、酒のせいだけではあるまい。
「そのお前の頭二つが……」
「じっとしゃがんで、いつまで自分の靴を眺めているのかと聞いているのよ!!」
「誰のせいだと、思って……」
「先に行くわよ、ノロマ!!」
軽装、素早くは動けるが重甲冑で身を固める相手には分が悪い革の鎧を纏った彼女が走り起こした風が、香水の香りと共にベオの顔先を撫でる。
「また団長に怒られたいなら!!」
「わかってるよ、リーデイド……!!」
別に非常時ならば彼女の裸を見ても咎められる筋合いはないのだが、そこがこの金髪の少年傭兵の歳、年齢が成せてしまうことなのだろう。
「いまから、支度を整えるさ!!」
「そのまま、いつまでも靴紐を見つめていればいい!!」
「慌てて履いたもんでね!!」
「あぁ、そう!!」
タゥウ……!!
そのまま武具庫から駆け出していく彼女に、ベオは「視線逸らし」の為の無意味な動作を止めて怒鳴り返し、男用の胴鎧が吊るされている部屋の片隅へと飛び付く。
「まったく……」
鎧のサイズが合わないのは紐を結び合わせればどうにかなる問題だが。
「皆、真っ先に良い物を取りやがって」
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