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そんな、何処かの主人公みたいな台詞を自分の恋人に吐く。そんな、定型的な台詞のやり取りで彼女、春佳とのやり取りはいつも始まる。
定型的。言ってしまえば、それ故に嘘が混じる場合がある。型に嵌まろうと無理をする。例えば今日は、本当は10分以上待っていたりする。手が悴んで痛い。その程度で済むのならまだ良かった。
「そっか。それにしても。うう、寒いね……」
春佳が身を縮込ませて言った。
「そうだね。早いところ帰ろうか」
僕は、手を繋ぐことも無く歩き始めた。
「また、寒波が来てるらしいね」
何でもない雑談の一時。寒さに触れないのもおかしいと思ったのでそのことに触れた。それだけだった。
「毎年毎年飽きないね」
つまらないように彼女が言った。
「別に、来たくて来てるわけではないと思うけど…」
軽い冗談に真面目に答えてしまう。たぶん、今、自分は苦笑しながら答えているのだろう。
「こんな日だったね」
春佳が思い出したように呟く。寒さ以上に無視できない話があるのは最初から気付いていた
「まぁ、事実今日だしな……」
去年のクリスマスの夜の話だ。
「好きなんだけど、私たち付き合わない?」
部活のクリスマス会の二人きりの帰り道。突然、春佳にそう言われた。丁度、雪が降り始めたときだった。きらきらと眩しかった。
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