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春佳とは数回、本当に数回しか話していなかった。でも、誰かに好かれていたと思うのは決して悪い気持ちではなかった。
よく知らないが、これから知っていけばいい。
そう思いながら、実は降雪に物語さを感じ告白を受け入れたのかもしれない。シチュエーションに酔ったわけだ。だから、気付いたら物語の主人公らしい台詞を吐いていた。
「僕も好き……だから付き合おう」
物語のために自分を偽って。
陽が沈んで来た。お互いの顔が見えなくなるくらいには辺りは暗い。道の街灯の少なさも合間っているのだろう。少し先の大きめの通りまで、しばらくこの調子だ。
「そういえば、受験の調子はどう?」
春佳がふと聞いてくる。
僕らは高校三年生。いわゆる、受験生だ。
「今は悪くないよ。推薦は落ちたからね。一般で頑張らないと」
センター試験はもう数週間と無い時期だ。今日だって冬休みなのにわざわざ高校に勉強に出てきた。
「そっか、頑張ってね」
ありがたい一言だ。
まぁ、そう言う春佳は推薦入試で合格を決めていたりする。しかも、僕の志望校だったり。
だから、嫉妬が無いと言ったら嘘になる。
彼女はいつだって逞しかった。奔放で自由で突拍子の無いことをして、まるで物語の主役のようだった。生徒会会長をしたり、部長をしたり、試験ではいつも上位。
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