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ひみつにしているが別に彼は、幸輝は好きでは無かった。
ただ、雪が降る中、物語の登場人物みたいで思わず嘘をついた。つまらない訳では無かったけど、面白くは無かったなぁ。
幸輝も駄目だよ。恋人になるなら、そう演じないと。罪悪感などに負けていたら主役に成れないよ。そう根拠が無いことを指摘する。恐らく大きくは外れていない。
私は数年前、贋物ながらも本物になろうと決めた。特別と呼ぶには酷く凡庸だったから、周りに仕事を押し付けながら生徒会会長を演じた。秀才と呼ぶには及ばない凡才だったから秀才をあらゆる手段で蹴落とす努力をした。誰かを救える程の英雄にもなれなかったが、誰かを陥れる悪魔になった。
後は、恋に生きれる程に盲目にはなれずも、盲目を演じるだけだった。結局、別れたけど。仕方がない、どうせ、次がある。今まで通り何度でも繰り返そう。
だけど、クリスマスに雪の中で告白して付き合って、雪の中で別れを告げるのは、なかなか物語の主人公らしくて良かった。悪くない。
私という物語の主人公のためだ。彼と別れる理由なんて「雪が降ってきたから」、それだけで十分だろう。
きっと、今日も私は主人公だった。
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