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彼は、私の人生の――光になった。
彼と会えたのはそのたった一度だけだったけれど。俯いて、ぼそぼそと小さく呪詛を吐いて生きるばかりだった私の人生に――その言葉と笑顔がどれほど力をくれたかわかるだろうか。
生まれて初めて、可愛いと言ってくれた彼。
その正体を知ったのは――大人になった私が娘を連れて、久しぶりに故郷に帰ってきた時のことである。孫を膝に乗せながら、母が昔の新聞を出してきて教えてくれたのだ。
『あの河川敷でね、虐められていた妹を助けようとしたお兄ちゃんが川に落ちて死んだことがあったのよ。小学六年生の、シノ君っていうんだけどね…きっと、とても優しい子だったんでしょうね』
あれがきっと、私の初恋だった。
思い出し、噛み締めながら――私は今日を生きている。人を不幸にしたいと願っていては、本当の幸福など得られない。自分を一番不幸にするのは、いつだって自分だけなのだ。
誰かの人生に石を投げずに済んだ私は考えるのである。自分が救われた分、いつかどこかで、自分もまた誰かを救うことができるのだろうか――と。
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