きらりと、ひかった。

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 私の顔は、幼いながらに自覚せざるをえないほどに、非常に醜いものだったのだ。眼が垂れていてしかもどこか左右非対称、皺が寄っていて顔が潰れているというよりまるでお婆さんのよう。鼻はぺちゃんこで上向いていて、真正面から見ても鼻の穴が見えそうなほどだ。時折鼻毛も見えてしまう。唇は厚くてぼってりしており、しかも口のサイズが鼻と比較して妙に大きい。汗をかきやすい体質のせいかニキビができることが多く、頬はエラが張っていて非常に角ばっていた。  また、私は元々太りやすい体質だったために、いつと首回りにも腹回りにもおおきく浮き輪のように肉がついていたのである。太っていて、ブサイクで、しかも臆病でいつもおどおどしている女の子。――子供は残酷だ。自分より下だと思った存在には本当に容赦がないし、同じだけ“異物”を忌避して排除しようとする。私はいつも子供たちに酷い渾名をつけられては苛められていた。虐めてくるのは主に男の子達だったが、女の子達も女の子達でいつも遠巻きでひそひそしゃべりながら私を見て、苛められて泣いている私をを笑っていたから同罪だろう。  私はそんな連中が、大嫌いだった。私だって可愛くなりたい。お洒落がしたい。友達が欲しい。誰かに、可愛いねって誉めてもらいたい。――好きで、こんな容姿に産まれたわけでもないのに、どうして誰も私の気持ちをわかってくれないのだろうか。 『あたしも、お兄ちゃんみたいに綺麗な顔で生まれたかった!なんで、あたしだけこんなにブスなの!?』  自分の顔は、母にも父にも兄にも似ていない。だから、幼い私は本気で、自分は拾われた他人の子だと思っていたのである。 『嫌い、嫌い、嫌い!こんな顔嫌い!みんな嫌い!だいっきらい!!』  残念ながら、私の顔は隔世遺伝のようなものだった、と後になって知ってしまうわけだが。私が生まれる前に死んでしまった母方の祖母の幼少期の顔が、私とそっくりだったことを知ってしまったからである。  不思議で仕方なかった。私と同じほどにブスなのに、なんで祖母は結婚が出来たのだろうか。そこそこ良い家のお嬢さんだったからお見合いだったのかもしれない。それで、祖父も渋々結婚したのかも。そう思うと祖父が非常に気の毒になった。デブスな嫁との結婚なんてさぞかし苦痛であったに違いない。昔ならもっと、ひそひそ陰口を叩く輩は多かったはずだろうに。
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