きらりと、ひかった。

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 私はあっけにとられて彼を見ていた。いつからそこにいたのだろう。私は確かに、誰も見ていないことを確認してから呪詛を、石を川に投げ入れ出したというのに。彼はまるで、煙みたいに突然その場に現れたのである。  けれど、その驚きは――すぐに憤りに変わった。なぜなら彼が、とても綺麗な顔をしていたからだ。自分とは正反対。彼が男の子であっても関係ない。綺麗な顔をしている相手は、当時の私にとっては須く嫉妬の対象でしかなかったのである。 『…あたしの願い?なんも知らないのに、勝手なこと言わないでよ!!可愛い顔をしてるやつに、あたしの気持ちなんかわかるわけない!!本当はアンタだって、こいつ超ブスーって心の中で笑ってんでしょ?全部知ってるんだから!!』  叫べば叫ぶほど空しくて、涙がぽろぽろと溢れた。惨めで仕方ない。嫉妬したところで、現実が変わるはずもないというのに。  私の気持ちを本当に理解してくれる人なんて、この世界の何処にもいないと思っていた。大好きな家族でさえ、本当の意味で信じることが出来なくなっていたのだ。彼らがみんな、“綺麗な顔”をしているという、ただそれだけの理由で。 『知ってるよ』  そう、だから。 『君は、本当は…可愛くなって…誰にも苛められず、笑って毎日を過ごしたいんだよね。みんなに好かれる女の子になりたいんだよね』  思っていたことをそのまま言い当ててきた彼に、あっけにとられたのである。呆然として言葉が出ない私の手を強く握り、彼は言った。
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