きらりと、ひかった。

7/9
前へ
/9ページ
次へ
『馬鹿にされて悔しいとは思うよ。でも、君の見た目だけを見て馬鹿にするような奴等のせいで、君が心を砕く必要はないんじゃないかな。傷つくのは仕方ないし、気にするなと言っても無理だとは思うけど…そんな連中のせいで、君の望んだことがどんどん遠ざかるのは、僕も見ていて凄く悲しいんだよね』 『遠ざかる…って…』 『君はちゃんと可愛くなれるのに、君自身がそれを遠ざけてしまうってことだよ。人の不幸を願う顔は恐ろしいよ。怖いよ。それ以上に、醜い表情なんてないんだよ。どんなに美人でも、その顔をするだけで…みんな離れていっちゃうんだ。可愛くなりたいなら、その顔をしすぎてはいけない。それが、君の本当の顔になっちゃったら、もう元には戻らなくなっちゃうからね』  初めて、だった。家族以外で、私の眼を真っ直ぐに見つめて語りかけてくれた人は。  恐れることも気持ち悪がることもなく、私の手を握ってくれた人は。 『君のお祖母ちゃんの話を、お母さんやみんなからたくさん聞いて御覧。外見に囚われて人を馬鹿にするような人達が絶対持ってはいないものを、お祖母ちゃんはたくさん持ってたことに気がつくはずだから。優しくされたいなら、誰かに優しくするしかない。愛されたいなら、愛する努力をするしかない。少しずつ、君に出来ることをコツコツ積み重ねるんだ。誰かは必ず、そんな君を見ていてくれるはずだからね』  綺麗事だ、と思った。しかしそれ以上に私の心を占めていたのは、どうしてそんなことを彼が言ってくれるのか、ということだった。  私の気持ち悪い顔を見て、みんなが気味悪がって離れていくか、悪口を言うか、こそこそ陰口を叩くかのいずれかだったのである。親戚の大人達でさえ、私のことを馬鹿にして話しているのを聞いたことがある。それで両親がどれほど肩身の狭い思いをしていらのかということも。  ましてや、同じ年頃の――とても綺麗な男の子が。こんな私の手を握ってくれて、眼を見て話してくれて、励ましてくれること自体――何もかも、初めてのことだったのである。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加