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ぽんと、そでの部品を束であたしになげた。
班の人たちがそろってくすくす笑いはじめたけど、あたしはその束をひろってよく見た。ピンクのバツ印はなかった。だから、ほうっと息を吐いて、
「これ、あたしのぬったやつじゃありません」
って、チーフにいった。
竹内チーフの目の横がぱっと赤くなった。
「あんた、何、責任逃れするつもり? どう見たって、あんたの縫った袖じゃないの」
あたしはミシンの上の、あたしがぬったそでをチーフに見せた。
「ほら、ここ。あたし、ぬい終わったら、このピンクのバツ印をつけることにしたんです。でも、この束にはひとつも印がありません。だから、この束はあたしんじゃありません」
チーフは束をよく見てくれなかった。
「なにそれ意味わかんない、とうとう逆切れ? うそつき」
「うそなんて、ついてません」
あたしがいい返したところへ、千葉主任がやってきた。
「ねえねえ竹内さん、混入の原因がわかったよ」
主任はあたしをちらっと見て、ちらっと笑った。
「この子のせいじゃなかったんだ。実は深夜シフトの実習生がずっと勘違いしてたんだ。わざわざこっちの部屋まで歩いてきて、ここに入れてたんだって。向こうの主任がほら、あの大塚大先生でさ、なんだか数が合わないなあ、とは思ってたらしいんだけど、のんきにかまえてて、オレが調べてやっと……」
竹内チーフはずっと動かないで、主任のせつ明を聞いていた。顔からは赤みが消えて、反対にどんどん白くなっていった。
あたしはどきどきした。
「そういうことだから、じゃ」
千葉主任はあたしにまたちらっと笑いかけて、それから出ていった。
竹内チーフは足がゆかにのりでくっついちゃったみたいに動かない。班の人たちはみんなミシンにかぶさって、すごいいきおいでかけだした。
あたしもなにをいったらいいのかわかんなくって、ミシンにもどろうとした。
「……それで、してやったつもり?」
うめくような声がして、竹内チーフがとんできた。大きい音がして、ほっぺがびりっとした。
「竹内さん!」
となりの班のチーフがうでをつかんでとめた。その人がとめなければ、あたしはもう2、3回たたかれてたと思う。
うでをつかまれたまま、すごい顔で竹内チーフはさけんだ。
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