第1章

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 「その気持ちはすごくよくわかるよ。日曜の夜ってつらいよな」  っていってくれた。  こないだ、スーパーであの女の人と女の子に会った日から、丈一さんは、あたしにどんどんやさしく親切になっていく気がした。でも、それはあたしの知っている丈一さんとはちがう気がして、へんな気がした。  あたしはおでこを丈一さんのむねにくっつけた。いつもそうやるように、体のきずをひとつひとつ指でなぞった。つなげたら、星ざみたいに絵がかけそうって思った。オリオンざ、はくちょうざ、それから北と七星。今度、としょかんで星のずかんをかりてけんきゅうしようって思った。  でも、明日からはまた工場でおつとめだ。工場のことを考えると、あたしはがっかりしてしまう。  「あたし、やっぱばかなの。いつまでたっても仕事で失ぱいばっか。こないだも注意されちゃった。でもね、どう考えても、あたし自分がなんでまちがえたのかわかんなくって」  「そうかそうか。人間だもの、誰だって失敗は……」  っていうとちゅうで、丈一さんはねてしまった。  あたしは丈一さんにせ中を向けて丸まって、がっかりしながら工場のことを考えた。    あたしの工場では学校の生とや会社の人のせい服をぬっているんだけど、細かいたくさんのしゅるいの部分がある。サイズも色もいろいろたくさん分かれている。だから、ごっちゃにならないようにそれぞれのサイズのそれぞれの部分を、決められたはこに入れなくてはならない。そのはこをロットってよんでいた。ロットには番号がつけられているので、例えばグレーの上身ごろのサイズ9はロットナンバー34に入れる、とか決まっているのだ。で、まちがって入れると次のラインの人たちがすごくこまるので、入れるときは、部分とロットの番号を必ずかくにんしてから入れないといけない。  あたしは何度も何度もかくにんしてから入れているつもりなんだけど、こないだからまちがいがつづいた。そのどれもがあたしがぬった部分だったのだ。  それで、チーフの竹内さんがとうとう、  「どういうふうにチェックしてるのかやって見せて」  って、あたしにいった。  あたしはびくびくしながら部分のサイズや色をかくにんして、ロット番号の表を指でさして、ロットについた番号もかくにんして、ロットに入れた。班のみんながくすくす笑ってるのが聞こえて、体があついような冷たいようなへんな気持ちになった。
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