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そして迎える春休み。
「リッちゃん~。今からカラオケ行かね? 二年A組のお別れ会ってことで!」
三年生の卒業式が終わった翌日だった。
終業式も終わり、体育館から教室へ戻ってる途中、ささやんが俺の肩を抱いてユサユサと揺らす。
「ああ~、まぁいいけど」
そう答えた瞬間、太腿のところで携帯がブーブーと震えた。ネットゲームのお知らせか何かかな? と携帯を取り出すと、【せんせい】の表示。俺の携帯に登録されている【せんせい】は一人しかいない。
『今日の予定は?』
くすんだ世界が一瞬にして風が吹き抜けるかのように変わっていく。すべての感覚が冴え、景色はクッキリと彩られる。俺は凄い勢いでメールを打ち返した。
『なーんにもなーい!』
「リッちゃん?」
ささやんが顔を覗き込んでくる。
俺は両手で握った携帯を胸に当て誤魔化すように大きくした目で微笑んだ。また手の中で震える携帯。
『正門から百メートル先で待ってる』
「カラオケやっぱパス!」
「はぁ!?」
「最重要な案件できちゃった」
目をパチクリお口あんぐりなささやんの腕から頭をスッポリと抜き、「んじゃね~」と手をひらひらと振ってダッシュ。教室へ戻り鞄を掴むと正門まで全力で走り、辺りを見回した。ロータリーの向こう、正門を出た先にごつい四駆が一台停まってる。
運転席のドアが開き、ビシッとしたスーツに身を包んだ先生が降り立った。
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