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「ふぃ~」
先生は車のエンジンを停め、ため息を漏らし、サングラスをグイと上げた。いたずらっ子みたいな笑顔で俺を見る。先生のバックでさざ波がキラキラ乱反射してる。凄く眩しい。
「青葉」
「……遅い……でも、おかえりっ!」
シートベルトもおかまいなしに、先生に抱きつくと、シートベルトを外した先生もギュウギュウと俺を抱き締めてくれた。
「ただいま! でもって、ごめん! 連絡もできなかった」
いっぱい文句言ってやろうって思ってたのに、何も浮かんでこない。俺は先生の肩に頬を乗せたまま「うん」って返事をした。
「……好きだよ。リツ」
先生が俺の髪をクシャクシャ混ぜながら囁く。初めて名前で呼ばれた。でも、とっても懐かしい感覚。すごく落ち着く。
「ずっと先生に会いたかった」
「うん。てか、俺もう、先生じゃないから。名前で呼んでくれ」
突然の要望に顔を上げ先生を見た。
いきなり名前って言われても……。
「名前……長谷部、さん?」
「旬だよ」
「知ってるしっ! じゃあ、旬さん?」
「なんでもいいよ。リツの呼びやすいので」
「うーん」と考え、そう言えば以前も同じような事をお願いされたことを思いだした。先生を見る。先生はキョトンとした顔。その唇にチュッとキスして言った。
「旬くん大好き」
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