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そんなこんなで、車の中で旬君がイソイソといきなり着替え始める。旬君は学校で着ていたどこぞの御曹司みたいな格好じゃなくて、ブラックジーンズに紫色のラフなVネックのトレーナー姿になった。ビシッとしたさっきのスーツは仕事着で、我慢できなくて仕事上がりにそのまま学校へ来ちゃったらしい。わからなくもないけど、溺愛っぷりにちょっとビビる。
なんて言いつつも俺の頬っぺたはニッコニコだけど……。
でも、意外にワイルド系な私服姿も、あ……と妙に腑に落ちた。この旬くんカーも四駆だもんね。これが本当の旬くんなんだね。どっちにしろイケメてるよ!
海沿いのおしゃれなレストランでランチをしていると旬君が言った。
「本当の俺の家へ案内するよ」
「本当の?」
「うん。リツにはちゃんと知っていてほしいから」
着いたのは以前の高級マンションじゃなかった。あれよりもっと庶民的な普通な感じのマンション。
「ガッカリさせちゃうかもしれないけど、あのマンションの家賃、目玉が出るくらい高いから」
あのマンションは潜入捜査のために作られた環境だったらしい。もし学校ぐるみの犯罪だった場合に備え、住む場所を特定され刑事だと発覚しないよう念には念を入れ、キャラクターを作り込んだと言う。謎だったもう一個のベッドも相棒さんや、万が一で生徒を保護したときのためのものだったんだって。まさか、保護とは関係のないところで俺が使っちゃうとはね。やっぱりニヤケちゃう。
「一応ここも、セキュリティシステムは万全だから」
正面玄関で暗証番号を押しながら、旬君が左右の上をパパッと指差す。見れば監視カメラが二台設置してあった。
なるほど。
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