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部屋はマンションの八階。
「おじゃましまーす」
玄関からは二重扉はなくて、入って直ぐにトイレやお風呂などの水回りがあり、正面のドアを開けたら対面式のキッチンとおしゃれなリビング。キッチンはやっぱりビックリするほどキレイで、リビングには見覚えのあるウォーターサーバーがあった。高級感溢れる雰囲気じゃないけど、シンプルで使い勝手のいい配置。あの部屋よりずっと素朴なおしゃれさはとっても落ちつけるし、俺はこっちの方が好きだ。
隣の寝室もベッドだけでいっぱいいっぱいな部屋だけど、家具が白色で統一してあっておしゃれ。部屋の真ん中にデンと大きなベッド。枕側の壁にはモノクロの大きな写真。アメリカかどっかの昔の女優さんだっけ? 有名な。ショートカットの可愛い人だ。
結果、スタイリッシュできれい好きな旬くんの印象は、部屋が変わっても変化ナシだった。
「どう?」
キョロキョロしてる俺に旬くんが尋ねる。
「うん。気に入った」
「ほんと? 良かった! あ、ソファ座ってて」
「うん! こっちの方が俺んちって感じするもん。未来のね」
ソファにポスッと腰を下ろして言うと旬くんが笑った。
「え? あははは」
キッチンからジュースを持ってきてくれた旬くんが、ソファの前のローテーブルに置いて俺の横に腰掛ける。
「じゃあ、その時こそニLDKに引っ越さないと」
「なんで? 寝室は一個あれば十分でしょ」
「四六時中一緒だと飽きない?」
「あ……飽きちゃうんだ……」
わざと顔の筋肉を解放してシラケ顔を作ると、旬くんが横からギュッと抱きしめてきた。俺の頭に頬をスリスリしてくる。
「ぷぷ。嘘だよ。二人で暮らすなら俺の仕事の関係上、もうひと部屋は要るかな? って思うだけ。リツとは一緒にいても楽しいって分かってるから」
「ホントかなぁ~」
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