アイドル

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 先生は母ちゃんと話したわけでもないのに、八時半過ぎには自宅まで送り届けてくれた。 「今日は助かったよ。ありがとう。夜更かしして明日寝坊するなよ?」 「はーい。ごちそうさまでした」 「車から降りたら見送らなくていい、直ぐに家に入って玄関の鍵をすること。でも何か異常があったら直ぐに外へ出て来い」  え? 先生の言葉になにか引っかかる。鍵の心配までは小学生じゃないんだから。と思いながらもまだわかる。異常があったら……以降が妙に違和感を感じる。  俺は顔をしかめながら、異常事態をいろいろと想像してみた。  家に上がって、電気をつけたら部屋が荒らされてるとか? もしくは泥棒と鉢合わせ!? 大きな斧を持った殺人鬼とか!  自分の想像に一気に顔が青ざめる。  先生との焼肉が俺の最後の晩餐に……。 「か、帰りたくないんだけど」 「えっ!?」  先生は目を丸くして驚きの声を上げる。 「あ、青葉……?」 「だって先生が怖いこと言うから」  先生は「ああ」と何故かホッとした表情をして、俺の背中をバンバンと叩いた。 「なんだ。青葉は案外怖がりなんだな。でも気持ちは分かるぞ! よし! 先生が先に家に入って全部の部屋の見回りと戸締りチェックをしてやろう。それなら安心だろ?」  俺はぎこちなく頷き、先生に鍵を渡した。二人で車を降り、鞄をぎゅっと握りしめ、先生の後ろを歩く。先生は車の中から懐中電灯を取り出し、家の敷地をわざわざ一周してチェックした。家に置いてある懐中電灯と違い、先生の懐中電灯は物凄く強力でかなり明るかった。手の中にすっぽり収まるサイズなのに、光も白色で庭の隅々が広範囲で照らされる。こんな懐中電灯があるんだ。きっとLEDの超お高い品なんだろう。
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