アイドル

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 十月にもなると、夜はわりとヒンヤリしてる。今日は肌寒いくらいだった。虫の音が聞こえるだけで、その他の物音は一切しない。静かで聞こえるのは二人分の足音だけだ。 「窓が割れてたり、いつもと違うな。って思ったら教えてくれよ」  声を出さないでウンウンと頷く。家のまわりを一周して異常がないことを確認してから玄関ドアの鍵を開けた。一個一個電気を点け、リビング、キッチン、風呂、トイレ、二階の部屋も先生は見て回ってくれた。 「大丈夫。戸締りもOK。今日は用心の為に玄関だけ電気を点けておいた方がいいかもしれないな」 「うんうん」 「もし何かあったら電話しろ。携帯の番号教えておくから」 「うんうん」  先生は携帯を見ることもなく番号を言う。慌てて家電の横に置いてあるメモ用紙にそれを書きとめた。 「じゃ、おやすみ」  玄関のドアを閉めながら「鍵かけろよー」といつまでも言う先生。 「先生も、気を付けてね」 「おう。じゃあな」  先生は俺の頭に手のひらをポンと置き、ニコッと笑ってドアを閉めた。  ドアが完全に閉まると同時に鍵を掛ける。早々にリビングへ戻り、テレビの電源を入れた。音量をいつもより大きくして、さっさか歯磨き。  お風呂は……明日の朝でいいや。すっぽんぽんなんて無防備な格好なれるわけがない。いつでも逃げられるようにしとかなきゃ。  客間の押入れから毛布だけ引っ張り出し、スウェットに着替える。  今日はリビングで寝よう。  もちろん明かりは煌々と点けた状態。テレビの番組が終わって砂嵐やピーの画面になる前に寝ないと! そう思ったのに、思えば思う程、目が爛々と冴えて眠れない。 「ん~っ」  何度も寝返りを打つ。なんとなく意識が沈んできて、眠れるかも……と思ったその時だった。  カタッと小さな物音。
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