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「お! きたきた! 待ってたぞ青葉!」
先生は顔を上げると嬉しそうにニコニコ笑って俺を手招きする。
そうそう、この笑顔。
「なんですか? お手伝いって」
「うんうん。ったくよ~。だーれも来ないから落ち込んでたんだよ。青葉は優しいな」
昼休みの時だった。購買へ行こうと廊下を歩いてると、先生が俺を見るなり近づいてきて「放課後用事なかったら教室きてくれ」とお願いされたんだ。
先生は嬉しそうな表情のまま一枚の画用紙を俺へ渡す。そこには教科書でお馴染みの日本人とアメリカ人の男女が会話をしている絵があった。鉛筆で下書きして、マジックでフチ取りがしてある。
……それにしても、目を見張るほど劇的に下手くそな絵だ。
「ここにカラーのマジックがあるから、その二人に色を塗って欲しいんだよ」
「これ……採用なんですか……」
「なかなか上手く描けたと思わないか? いやー下書きが大変だった」
「凄く個性的だとは思います」
ケンとジョディ。
ジョディの鼻は三角定規を使ったのが丸分かりだし、おっぱいが戦艦みたいに飛び出してる。どうして目を頑張ってみたんだろう。もっと簡略した、なんなら点でもよかったんじゃないのか? 長いマツゲが怖いんだけど。口も男女問わずくっきり唇の形を試みてる。失敗してるけど。
「お! やった! 頑張った甲斐があるぜ! 今度の授業参観ではみんなに張り切って手を上げて欲しいしね」
「授業参観に使うのっ!?」
思わず大声を張り上げてしまった。
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