アイドル

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 だってこれは……。  さすがに、笑えないくらいの域に入ってる。まさか先生がここまで絵心がゼロだなんて誰が思うだろう。授業参観の時、先生が黒板にこれを貼った途端、「ひーー」って悲鳴があちこちから聞こえる風景が鮮明に頭に浮かんだ。 「おう。服の色は青葉のセンスに任せるよ」  いけしゃあしゃあと言ってくる。  先生は別の画用紙に今度はセリフの吹き出しの形を書いていた。両面テープにハサミ、磁石。先生の工作はまだまだ続きそう。俺は赤いマジックでわざとジョディの服からマジックをはみ出させた。 「先生、失敗しちゃった」  先生は油性マジックをピタッと止めて顔を上げた。 「あ……うん。でもまぁいいだろ。あとで修正液で……」 「いや、でもこんなにはみ出しちゃったし。そだ画用紙ってもうない?」 「ん? あるよ。書いてくれるのか?」  俺はウンウンと小刻みに頷いた。 「授業参観用なのに修正液だらけじゃかっこつかないもん。ほら、俺の責任だし」 「そおか? 悪いな~。でもお願いしちゃおうかな!」 「うんうん。ごめんね? せっかく先生が頑張って書いたのに」  ふと廊下の方から視線を感じた。振り返ると廊下に教頭が立って教室を覗いている。 「精が出ますね。授業参観の準備ですか?」  後退した生え際。オデコが夕日に照らされ光ってる。 「ああ、教頭先生。そうなんです。僕があんまり絵が下手くそなので、青葉が代わりに描いてくれるんです」  長谷部先生の言葉に教頭が明るい笑い声を上げる。 「ははは。それは良かったですね。長谷部先生、最後、窓の戸締りだけ確認してくださいね」 「承知しました」 「がんばってください」
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