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あからさまに口を突き出し愚痴ると、先生がからかうように言った。
「なに言ってんだ。ひとりじゃ怖くて眠れなかったくせに」
「先生がビビらせたんでしょ。それにもう一人じゃないもんねー」
べーっと舌をだし、おどけた顔を見せる。
「青葉のお母さんにちゃんと挨拶したいし、行くか」
先生はすっかり先生の顔に戻ってしまった。出掛ける準備を始める先生の姿を目で追いながら、意地悪を言ってみる。
「挨拶って、『律君を僕に下さい』とか?」
先生は振り返り、ちょっと困ったように眉を下げた。
「それは……せめて高校卒業待たないと。お母さんビックリしちゃうだろ?」
「待ったところでビックリは変わらないだろうけどね」
卒業すれば貰ってくれるって保証を得た俺は、その事に驚きも疑いも持たなかった。だって俺は先生と恋人関係になったんだもん。当然でしょ。
そんなことより、現在をもっとずっと余すところなく味わっていたい。
「せーんせっ」
用意をする先生を甘ったるい声で呼び付け両手を伸ばす。先生はまた振り返り、近づきながら両腕を広げて俺をギュッと抱きしめてくれた。
「青葉……」
「明るい内って言ったって、まだ大丈夫だよ。小学生だって五時帰宅でしょ? もうちょっと二人っきりでいよ?」
先生の肩にくっつけていた頬を離し、今度は先生の横顔へくっつける。
俺ってこんなに甘えん坊さんだっけ? なんかキャラチェンしてない? そう思いながらも、まぁいいや。って思った。俺をこんな風に変えたのは誰でもない先生なんだから、いっぱい甘えてやるんだ。責任とってもらわなきゃね。
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