モヤモヤ

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「な? 約束だ」  先生は引き続き真剣な顔で小指をグイと出す。  ガ、ガキ扱い? 俺はもっとこう……大人な恋愛を目指したいんだけど……。  しかし、差し出された小指の処理をどうすればいいのかわからず、俺は視線を逸らし「はぁ」といいながら、先生の小指に小指を絡めることにした。 「ゆびきりげーんまーん。うそついたーら……」  先生は指きりげんまんを歌い満足そうな笑顔で指を離すと、俺をもう一度ギュッと抱き締めた。 「もし、もしも、どうしても夜遅い時間に、例えばコンビニ行く用事ができたら、先生へ連絡してくれ。必要なものは届けるから」  どんだけよっ!  先生のマンションから俺の家まで車で三十分くらいかかるんだよ? そんなの頼めるわけないし。  「たぶんないから大丈夫」 「うん。でも、些細なことでもいい。なにかあったら遠慮せずに連絡してくれ。な?」 「……うん」  先生の熱意に負け、妙に神妙な返事になってしまった。  こういうのを溺愛というのだろうか?  なんか思い描いてるメロメロとは違う。
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