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しかし理想と現実には大きな隔たりがあった。ウキウキニコニコご機嫌な俺とは正反対。先生はSHR中も、授業中も、目を合わてもさり気なく逸らす始末。
実にアッサリ通常運転。昨日、おととい、人にチュッチュしまくり、頭撫でまくりだった先生はいったいどこに行ってしまったものか。
浮かれてるのはやっぱ俺だけ?
三時間目の授業が終わり廊下へ出ると、「長谷部先生」と呼ぶ声。振り返ったら、先生に隣のクラスの男子が纏わりついていた。先生の腕に腕を絡め、ガシッと半分しがみついて先生を見上げる。うっすら頬を染め、目からは好き好きビーム光線。
もう何度も見慣れている光景なのに、こんなにムカムカするなんて。
「頼重、先生は職員室へ戻らないといけないから」
「えへ。はぁ~い」
頼重とは、日本有数の大企業の中の一つ、頼重重工株式会社のことだ。
頼重誉はそこの次男か三男だって噂。おぼっちゃんな感じでイヤミがない。可愛い顔つきだし、ショタ枠入っているから男が男にベタベタしてもあまり違和感を感じさせないという、実に羨ましいヤツ。先生も本気で叱ってるわけじゃない。「仕方ないな」という感じに笑って、廊下を歩いて行く。
俺もそっち系キャラでやってれば堂々と奪い返してやるところだ。でも、まさか先生の恋人になれるなんて思ってなかったし、突然のキャラ変をする度胸もない。
ハンカチを持ってたら『キーッ!』て噛み引っ張りたいくらい。
この悔しさや、ムカムカも手伝って、俺は意地になっていた。
俺からはぜーったい! 話しかけてやらないっ! あっちがしてんだから、だったらこっちだってだ! ガンスルー決め込んでやるんだ!
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