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俺は返事を返さないでそのまま携帯をポケットに入れ学校を出た。ブラブラ歩いて、わざわざ本屋にまで寄って立ち読みしてから家に帰った。
家についても、ご飯食べても、風呂に入ってもメールはなしのつぶて。
待っちゃいない。携帯も持ち歩かない。勉強机に置いたままだ。
俺の気持ちはドンドンドンドン荒んでいくばかりだった。
夜の九時頃ようやく携帯が鳴った。しかたなく見てやると先生からのメール。どうせ言い訳かなんかだろうと、荒みまくってる俺はムッと口を突き出したままメールを開いた。
『遅くなってごめん。青葉の家の右隣の田中さんちの前に車を停めた。出て来れる?』
ヒョコッと引っ込んだ口が今度はパカッと開いた。
来た。来てるの? 外に? えーーーー、来ないかと思ってたのに、えーーーーーーー、いるの? えーーーーーーー。
シャッとカーテンを開いて外を覗くと、確かに田中さんちの前に車が一台停まっている。でも、先生の車は四駆だったよね?
俺は素早くメールを返した。
『車はあるけど、先生の車じゃないみたいだけど』
『うん。代車だよ。黒のセダン。出てこれないなら、無理しなくていいからね』
『ううん、いくいく。ちょっと待っててね』
俺は携帯とお財布、家の鍵をポケットに突っ込んで、そろりそろりと階段を降りた。
リビングからは大きなテレビの音と笑い声がする。足音を殺せばこのまま気づかれなさそう。
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