不穏な出来事

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「リっちゃん、帰り?」  下駄箱で声を掛けてきたのは同じクラスの笹本こと、ささやんだ。 「ああ、うん」 「んじゃ、一緒に帰ろー」  ささやんは俺の肩を支えに靴を履き替え、そのまま肩を組む。 「いざ! ブック横山へ!」 「本屋行くの?」 「そお! 今日は待ちに待った新刊日だかんね」 「真っ直ぐ家に帰れって言われたっしょ」 「用事が終わったらね。終わったら!」  俺は本屋に用事なんてないんだけど。でも、先生も心配してたし、友達をガードするのも大事? 「俺塾あるし、用事が終わったら真っ直ぐ帰んよ」 「おーけーおーけー」  調子のイイささやんに揺すられながら歩いた。  ブック横山は学校から歩いて十分程の所にある。通学路からは外れちょっと遠回りにはなるけど、方角的には自宅方面だしね。 「リッちゃーん」 「買った?」  入口付近の漫画雑誌のコーナーで待ってると、ささやんはお目当ての単行本を手に持ち振って見せた。 「うんうん。早く買ってこいよ」 「ちょ、こっち」  ささやんはその本を脇へ挟むと、なぜか俺の手首を掴み、店の奥へと引っ張ってく。 「え?」  ズンズン俺を引っ張るささやんの勢いにつられバタバタ小走りすると、立ち読みしてるサラリーマンに鞄がぶつかってしまった。 「あ、ごめんなさい」  咄嗟に謝ったけど、サラリーマンは眼鏡をスッと上げながら顔を背け、本屋を出ていってしまった。
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