不穏な出来事

6/22

565人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
「じゃあ、来週は単語テストするから。ちゃんと覚えておくように」  ワークブックとペンケースを鞄に突っ込み、グッと伸びをし窓の外を見る。駐車場には車が数台停まっていた。塾は結構遠い所から通っている生徒もいるらしく、毎回車で送り迎えしてもらっている連中も少なくない。サッと見回したけど、先生の車は無かった。  同じ学校の生徒もいるから駐車場へ停めるのはマズイって思ってるのかも。連絡くれって言ってたし。  俺は携帯を鞄から出し、『今終わったよ』とメールを送信した。直ぐに返事が来る。 『塾出て右手にあるドラッグストアの駐車場にいる。前と同じ車ね』  おお。黒のセダンだっけ。  先生に『はーい』と返事をして、教室を出た。ドラッグストアは十時まで営業していて駐車場は煌々と明るい。先生の車も直ぐに見つけることができた。先生の乗ってる車に駆け寄り、コンコンと助手席の窓を叩くと、先生が『後ろへ乗って』とジェスチャーする。俺は頷いて後部座席に乗り込んだ。 「先生っ」  早く抱っこしたくて両手を伸ばす。先生はきょろきょろと辺りを見回し、後部座席へ移動してきた。ドアを閉めた途端、俺をギュッと抱きしめてくれる。 「どした?」  不安そうな声で聞かれ、ギクリとする。  どうもこうも、実はただ会えたのが嬉しくて、一刻も早く抱っこしたかっただけなんて、なんとなく言える状況じゃないな……。どうしよう。と考え、夕方の事を思い出した。 「なんでもないんだけど、ちょっと気になることがあって」
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

565人が本棚に入れています
本棚に追加