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翌日も学校で、俺は上機嫌だった。
手こそ振りはしないけど、表情だけは両手をパーにして先生に向かっておもいっきりぶんぶんと振ってる感じ。先生も機嫌よさげで、帰りのSHRが終わると、俺に軽く頷いて教室を出て行った。
今日はたっぷりデートができる。
「リッちゃーん。カラオケ行かね?」
ささやんがガバッと背後から覆いかぶさってユサユサと俺を揺する。両肩にずっしりとした重み。
「今日はパース」
「えー? なんでなんでなんで~? 塾ないよねぇ?」
後ろから覗き込みしつこく食い下がってくる。
「俺もいろいろ忙しいんだよ。こーみえてね!」
肩を離せと、ささやんの腕をポンポンと叩く。
「ちえ~」
ささやんは下唇を突き出し、他のやつらと教室を出て行った。
待ちに待ったゆったりデート。カラオケなんかでおじゃんにするわけないじゃんね!
教室の時計を見ると、十五時三十分。約束まで後二時間。待ち遠しくってしかたがない。図書館に早く行ったところで時間が短くなるどころか、待ち時間が長くなるだけなのに足早に教室を出ちゃう俺。本当に浮かれ屋さんだ。
図書館は一階。タタタン! タタタン! とリズミカルに階段を駆け下りる。
廊下を歩いていると、保健室のドアの前に保険医の森先生が立っていた。なにやらキョロキョロと左右を見回し誰かを探しているみたいな様子。俺と目が合うと「あ」という顔になった。
「あなた、青葉君だったわね?」
ニコッと笑顔で話しかけてくる。
「はい。この間はお世話になりました」
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