不穏な出来事

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 先生の正体は刑事で極秘任務のため、身元を偽り学園に赴任してきた。先生がたまたま教員免許を持っていたことで白羽の矢が立ったらしい。  教頭が生徒を渡していた相手は暴力団で、いかがわしい非合法な店へ出入りしていた教頭が暴力団に目をつけられたのが事の発端らしい。人身売買の相手は海外の富裕層。育ちが良くて可愛らしい顔立ちの日本男児は人気なのだとか。  教頭は未成年男子に淫行を働いているのを盗撮され、暴力団から脅迫された。だから口座に怪しい大金が入金した動きも無かった。  いくら脅迫されていたとしても、ぶっちゃけ身から出た錆。脅迫された時点で警察へ相談しなかったんだから、同情なんて誰がするだろう?  窮地に追い詰められた教頭が保健医の森信子に相談して、最初の誘拐が実行された。  最初の被害者は三木谷光一の半年前、田所涼という生徒。俺の一個上で彼とは面識がない。田所という生徒も素行に少々問題があって、たびたび学校を無断欠席することもあったみたい。当時そんな噂を俺も聞いた記憶がある。失踪当時も家出ではないかという見方が強かった。その三ヶ月後の失踪した生徒もあまり素行の良い生徒ではなかった。素行だけで言えば、三木谷光一も素行はあまり良くなかったけど、今までの生徒とは背景が違ってた。  背景っていうのは家がお金持ちだったってこと。お金持ちだけじゃない。政治家や警察上層部と太いパイプを持っていた。教頭の立ち位置ではそこまで把握できなかったんだろう。もし教頭が三木谷ではなく、他の生徒を選んでいたら、この犯罪の発覚はもっと遅れていたかもしれない。と先生はやけに深刻な表情で言っていた。
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