不穏な出来事

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 教頭と保健医の森信子は同郷で昔からの知り合いだった。二人が同じ田舎町で過ごしている時にも、人には言えぬような悪さを繰り返してきたことを自供したんだって。森信子は生徒たちの親切心へ付け込み車まで誘導。スタンガンで気絶させたあとは、借りていた古い民家へ運ぶ。そこまでが仕事で、教頭から謝礼として数万の金銭を受け取っていたらしい。  まさに俺が体験したまんま。  暴力団への引き渡しは俺が捕まっていたあの民家で行われていた。  連れて行かれた生徒があの場所で、どういう思いで過ごしていたのか。わかるような気もするけど、実際はもっと酷いものだったと思う。縛られたまま自分の人生が変わる時を待つんだから。目覚めたとたんパニックでいっぱいになっていた俺には想像してみたところで、やっぱりわからないと思う。  海外の闇ルートで売り渡された三木谷光一を始めとした三人の生徒の行方は未だ分かっていないんだって。でも、頼重だけは間に合った。警察が踏み込んだ暴力団事務所で無事保護することが出来たらしい。  鎮静剤を打たれ、恐怖に満ちた数日間を過ごしたみたいだけど、軽傷すら無かったんだって。栄養状態も良好だった事を考えれば、大事な商品っていうことが皮肉にも幸いしたってところなのかな……。  因みに、なんで先生が俺の居場所を知ることができたかっていうと、いつの間にか先生が俺の学校鞄とベルトに発信機を仕込んでいたから。全く気付かなかったよ。そんなのついてるなんて。  五時半の時点で俺との連絡が取れず、先生がGPSで居場所を調べると、鞄とベルトの信号が二箇所に分かれていた。それでピンときた先生は職員室から保健室へ駆け込み、ダンボール箱に隠してあった俺の鞄を発見して、森先生を尋問。居場所を吐かせ、俺の元へ駆けつけた。ってことみたい。  もし教頭の単独じゃなかったら、俺はあの家から暴力団の隠し部屋へと連れていかれ、救出はもっと難航していたのかも。
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