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現職の教師が暴力団と結託し、男子児童の人身売買をしていたというスキャンダラスなニュースは数日間世間を騒がせた。
当然学校にも報道陣が押し寄せ、頼重はそのまま学校へ現れることなく、別の高校へ転校してしまった。噂ではアメリカとか、どっか海外の高校らしい。
騒動が沈静化したのち、先生は最後まで身元をみんなに明かすことなく、一身上の都合で学校を去った。
先生の計らいで、最後の誘拐は報道されなかった。元より教頭が勝手に行った犯行であり、人身売買とは関係ないからだ。つまり、俺の拉致に関しては誰も知らないし、記者にインタビューされることもなかった。何事もなく通学し、授業を受け、友達とおしゃべりできる環境を先生が作ってくれたんだ。
ただ、先生のいない学校はとてつもなくつまらない。
先生は母ちゃんにだけはちゃんと全てを説明した。
先生が助けてくれた事で、母ちゃんの先生株はうなぎのぼり。教師じゃなく刑事だってわかってもそれは変わらない。それどころか、「長谷部先生のそばなら絶対安心だわ。逃がしちゃダメよ」ともろ手を上げて激励してくる始末。
ま、俺としても棚ボタというか……面倒な事にならなくて、良かった良かった。これで晴れて……と思っていたら、先生からメールがあった。
今回の件でとんでもなく偉い人から表彰され、またしても特別任務に就くことになってしまったのだと言う。
『終わったら連絡するから待ってて欲しい』
そのメールが最後だった。
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