青い私、十年前の省察

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信号を渡りきって、大通り沿いに伸びる歩道を右折。数秒の後に、止まっていた車が動き出す音がして、私の右側を高速で走り抜けていく。私は思案の海に沈む。 当時の私に何が分かっていたのだ、と聞かれれば、私は、まだ何も知らない小娘だったに違いない、と答える。そう、あれは……無知が起こした、悲しい事故だった。事故ゆえに、私の切実な恋心は見る影もなく打ち砕かれたし、同時に、私の純情はあそこで死んだ。十七の、惨めな生娘のまま死んだのだ。 忘れようと意識する度に苦しくなるので、私は忘れることを諦めた。そして時々、こうしてほじくり返しては、青い日々を思い出して悲痛な気持ちになる。気付いたら、十年経っていた。馬鹿らしい話だ。喧騒に満ちた歩道をしばらく歩いて、大きく口を開けている、地下鉄の駅に辿り着く。長い階段を下り、カビ臭い改札を抜け、ホームへ。 九時三十五分発、新木場行。あと三分ほどで、列車はやって来る。
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