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飲み物を買ってくるとのことで、俺はそのままライオンが見える柵にもたれ掛かりながら待つ。
「(もう3時か。閉園って何時だっけ)」
園内地図を広げようとして、ふと視線を上げた。
「……?」
有村が自販機の所で男性の2人組に声を掛けられていた。
横顔が強張っているように見えるのは気のせいではない。
「(ナンパか?)」
柵から手を離して有村の元に向かおうとした所。
有村は頭を下げ、早足でこちらにやって来た。
「大丈夫か?」
「え?」
一瞬きょとんとした表情をしたが、俺の伺うような視線に気付いたようで、“あぁ”と笑顔を見せる。
「向こうの展示スペースに作品があるから、まだ時間があったら見に来て欲しいって」
なんだ、取り越し苦労か。
まぁこんな所でナンパなんてそうしないよな。
「先生もどうぞ」
差し出されたのはお茶の入ったペットボトル。
「ありがと」
「あ、まだ寝てますね」
柵の向こうで横たわっているライオンに目を向ける。
「夜行性だからな」
「じゃあずっとこんな感じですかね。でも気持ち良さそう」
動いていなくても、有村は物珍しそうに眺めていた。
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