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「今日は施設の説明と履修科目の説明でした」
有村が分厚いシラバスを取り出して広げた。
「うわ、懐かしい」
9年も前か。
そう思うとさすがに年齢差を感じる。
有村が18で俺が27。
改めて考えると結構あるな。
いやでも、世の中にはもっと年齢差があるカップルなんてごまんといるし。
「先生?」
「え?」
「どうかしました?」
「え、あぁ。何でもない。有村は春休みは何してた?」
「皆と旅行に行ったんですよ。1泊2日の卒業旅行です」
学校にいた時は話さなかったプライベートの事を、有村は話し始めた。
遊園地に行った事。
お化け屋敷をリタイアした事。
着ぐるみもピエロも駄目だった事。
案外しゃべるんだな、と思いかけて気付く。
「(……線引きしてたのか)」
受験勉強の為に音楽室に来ていたから、それ以上は話さないし踏み込まない。
当たり前と言えば当たり前だけど。
「それでですね、泊まったのが旅館だったんですけど」
今はこうやって嬉しそうに話してくれる。
そんな姿が見られて、自然と頬が緩んだ。
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