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高校生の時は、先生と音楽以外の話をしたことがあっただろうか。
少し家族の事を話したくらいだと思う。
だからこんな会話が新鮮だった。
「あ、そう言えば送別会は何時からなんですか?」
「7時から」
時計を見ると、もう18時。
「えと、じゃあもうそろそろ時間ですね」
「そうだな」
先生が立ち上がったから私もそれに倣う。
場所は聞いていないけど、もう辺りは陽が落ち始めている。
名残惜しいのは山々だが、予定があっては仕方ない。
それに、空いた時間に会いに来てくれたのが一番嬉しかったから。
「……次の休みにどっか行くか?」
先生の口から出た、思いもかけない言葉。
数回瞬きをして先生の顔を見つめてしまった。
「え、何?」
我に返って慌てて返事をする。
「あ、はい!ぜひ!!」
こ、これってデートでいいんだよね?
私が先生とデート。
「(なんだかすごく照れる……!)」
でもそれ以上に嬉しい。
顔に熱が集まるのがわかるし、鼓動も激しくなっている。
「(お、落ち着け私……)」
「どっか行きたいとこある?」
はっとして先生を見た。
「行きたい……ところ」
……デートって普通どういう所に行くんだろう。
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