再会

6/21
前へ
/371ページ
次へ
高校生の時は、先生と音楽以外の話をしたことがあっただろうか。 少し家族の事を話したくらいだと思う。 だからこんな会話が新鮮だった。 「あ、そう言えば送別会は何時からなんですか?」 「7時から」 時計を見ると、もう18時。 「えと、じゃあもうそろそろ時間ですね」 「そうだな」 先生が立ち上がったから私もそれに倣う。 場所は聞いていないけど、もう辺りは陽が落ち始めている。 名残惜しいのは山々だが、予定があっては仕方ない。 それに、空いた時間に会いに来てくれたのが一番嬉しかったから。 「……次の休みにどっか行くか?」 先生の口から出た、思いもかけない言葉。 数回瞬きをして先生の顔を見つめてしまった。 「え、何?」 我に返って慌てて返事をする。 「あ、はい!ぜひ!!」 こ、これってデートでいいんだよね? 私が先生とデート。 「(なんだかすごく照れる……!)」 でもそれ以上に嬉しい。 顔に熱が集まるのがわかるし、鼓動も激しくなっている。 「(お、落ち着け私……)」 「どっか行きたいとこある?」 はっとして先生を見た。 「行きたい……ところ」 ……デートって普通どういう所に行くんだろう。
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!

191人が本棚に入れています
本棚に追加