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「先生は行きたい所はないんですか?」
「俺はどこでも」
そう言われて考え込む。
デートなんてしたことがないー……って不動君と出掛けたことはあるけれど。
映画は何をやっているだろう。
買い物に行くとなっても、食材しか買いたいものがない。
ゲームセンターなんて長時間いる所じゃないよね。
遊園地……はこの前行ったし。
……皆一体何をしているの?
花音や琴子ちゃんに聞いておけば良かった。
「なければ考えておくけど」
あれこれ悩む私を見かねたのか、先生が笑いながら言った。
「え、あ……」
自己主張がなさすぎるのも嫌だよね。
慌てて頭を回転させた。
「あ、あの、じゃあ動物園とか」
「動物園?」
先生の意外そうな声。
「1人じゃ行けない所をと思ったんですけど……」
子供っぽ過ぎたかも。
「他は……えっと……」
どこか他の所はないかと考え直す。
「じゃあ行くか」
「え?い、いいんですか?」
「いいよ」
いつもと変わらないにこやかで優しい笑顔。
それに引き替え、私はどぎまぎしてばかり。
舞い上がってるのって私だけなのかな。
それとも先生はこういうのに慣れてる……とか。
「(って、何考えてるの)」
ふる、と頭を振った。
私は初めてなんだから、それでいいじゃないか。
先生の事を詮索なんてしたって仕方がないんだから。
「有村電車だろ?歩きながら予定決めるか」
「はい!」
先生の横に並んで歩き始める。
それがなんだかこそばゆくて、知らず顔がにやけていた。
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