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子供みたいに楽しむ有村の姿は新鮮だった。
「ラッコだ!わぁ、ずっと同じ所泳いでますよ!」
柵から身を乗り出してラッコを見ていたし、その前に張り付くことおよそ15分。
こんなにじっくりと動物を観察したことなんてない。
北極熊の餌やりのアナウンスがなければまだ見続けていただろう。
「ペンギンってすごいんですね。跳ぶんですよ、ほら!見ました!?」
「見た見た」
それよりも、子供に混ざって目を輝かせている有村の方を見てしまう。
動物が可愛いと言うよりは、物珍しいという気持ちが大きいんだろう。
単に今まで経験してこなかった。
そんな印象を受けた。
「あ、30分後にペンギンの餌やりだって」
説明書きの所にそう書いてあったから、腕時計と見比べながら何の気なしに口に出す。
「本当ですか?じゃあここで待ってましょう」
「え!?」
入園して1時間半が経っているが、まだこのエリアしか見ていない。
いや、楽しんでるなら別に構わないのだけど。
「あ、疲れました?えと、それじゃあどこか休める所にー……」
慌てて地図を取り出そうとする有村。
「大丈夫、ここで待ってるか」
「いいんですか?」
「もちろん」
ぱぁっと花が咲いたような笑顔を見せて、またガラスに張り付いた。
結局、有村は餌をやり終わるまでここから一歩も離れなかった。
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