最終章

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噎せ返るワインの香り あなたが好きな銘柄で私は思い切りおしゃれをするの ワインと同じ色のワンピース ワインと同じ色の口紅 ワインと同じ色の傷 あなたがただいまと帰ってきた瞬間に私はお帰りなさいと抱き着くの あなたはきっと優しいキスをしてくれる ただいま、今日は二人の記念日だから早く帰ってきたんだ そういって、あなたはきっと、私においしいお土産を持って帰ってきてくれるのよ ねぇ、そうでしょう? ちくたく ちくたく ちくたく ちくたく 針の音が大きくて せっかく作った料理が冷めてしまうわ 早く食べてほしいな あなたのために作ったのに あなたのために作ったのに あなたのために作ったのに ただいま 帰ってきた!!! お帰りなさい 今日は何の日か覚えてる? 知らないよ それより、なんだいその恰好 まるで娼婦じゃないか ああ、だって 今日は大切な記念日なのに オードブル ワイン バケット ほら、あなたの好きなチキンだって どうしてそんなに冷たい目をするの? せっかっくの二人の記念日なの 疲れてるんだ 寝かせてくれ くだらない ああ、いつからそんな冷たい人になったの? 昔だったら笑ってありがとうって優しいキスをくれたのに いつから変わってしまったの? ああ、そうか、 わかったわ。 最近つけてる香水の子のせいね 匂うのよ あなた 香水の匂い ああ、なんてなんて下らないの 私はね、昼ドラなんか大嫌いよ だってあんなの誰も幸せにならないじゃない 誰かの不幸を笑うなら 私は誰かの幸せを祝ってあげたい。 なんて、陳腐な昼ドラかしら ハッピーエンドはどこにあるの? ああ、わかった このあなたに買ってもらった真っ赤なマフラー 冬になるといつも巻いてるの 自分の首に まだ、暑い夏だけど 冷たいあなたの心を温めてあげるわ この暖かいマフラーで。 ああ、暴れないで お願いだから 幸せにしてあげる あなたのことを このマフラーで このマフラーで あれ? おかしいな? なんで? 動かなくなっちゃった 巻き方がおかしかったのかな だって、あんなに暴れるから だって、許してくれ なんてあなたが言うから ああ、おかしい。 ああ、おかしい どこかで見た三文芝居のような風景に私は思わず笑ってしまう 首を絞めて。 あなたの首を この赤いマフラーで きっと、幸せになれるから 間違いないわ 絶対に
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