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「私たちでも事業がはじめられると、亡き先生からお聞きしたことがあったので、先生のお母さまにお話を伺いに来たのです」
インターホン越しに美景は話す。
しばらくの沈黙の後、甲野和史の母が応える。
「あらあ、こちらこそ、息子がお世話になりまして。今、開けますからね。お上がりください」と応答。
美景はニコリと微笑んで振り返った。
稜弥は息を吸い込んだ。スタイロンの目は冷ややかになり、ジェラルドはドアのロックがはずれる音が聞こえると、親指を立てて合図を送る。
和史の母親が出てきた。
「まあ、外国の方もお見えになっていますの?」
ジェラルドは右手で握手を求めた。
「私はアメリカ人です。デリック・ジェラルドといいます」
母親は「私は甲野美鈴です。そちらの方もアメリカから?」と乱雑なパーマの髪の毛をなおすように手をやる。
「いいえ。イギリスからです。レイモンド・スタイロンです。よろしく。ミセス」
リビングに通された。
四人には、水をグラスに入れて出された。
「甲野先生のことは、残念です」
美景は、頭をさげる。
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