1/2
前へ
/20ページ
次へ

 「私たちでも事業がはじめられると、亡き先生からお聞きしたことがあったので、先生のお母さまにお話を伺いに来たのです」  インターホン越しに美景は話す。  しばらくの沈黙の後、甲野和史の母が応える。  「あらあ、こちらこそ、息子がお世話になりまして。今、開けますからね。お上がりください」と応答。  美景はニコリと微笑んで振り返った。  稜弥は息を吸い込んだ。スタイロンの目は冷ややかになり、ジェラルドはドアのロックがはずれる音が聞こえると、親指を立てて合図を送る。  和史の母親が出てきた。  「まあ、外国の方もお見えになっていますの?」  ジェラルドは右手で握手を求めた。  「私はアメリカ人です。デリック・ジェラルドといいます」  母親は「私は甲野美鈴(こうのみすず)です。そちらの方もアメリカから?」と乱雑なパーマの髪の毛をなおすように手をやる。  「いいえ。イギリスからです。レイモンド・スタイロンです。よろしく。ミセス」  リビングに通された。  四人には、水をグラスに入れて出された。  「甲野先生のことは、残念です」  美景は、頭をさげる。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加