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 「あれが、地縛霊魔。呈露結界の主だろう。」  ジェラルドは、指さす。  英単語が書かれた紙テープのような鋭く長いものを鞭のように、何本も振るう霊魔。  その霊魔本体の体には、奇妙なことに、パセリが生えている。  そして、霊魔本体を守って古代の生物アノマロカリスが数匹、空中を泳ぐようにただよい四人を威嚇して、丸く放射状に配置された歯が閉じる開くを繰り返していた。  「古生物学者には、悪いがなぎ払うぞっ!」  ジェラルドが、吠える。  「植物?」  稜弥は戸惑う。  体はぶくぶくと太っていて、度を超した肥満体だった。眼は虚ろで、口からは、頭の痛くなるような英語の講義がむやみやたらに垂れ流されて、苛むかのようだ。  紙テープの鞭が、美景に向かって放たれる。  「ぼけっとするなっ! 間合いをもっと取れ」  ジェラルドが、盾になって一撃を食らう。  腰のあたりに手を入れるとリボルバー式のショットガンを取り出した。12ゲージの散弾を12発セミオートで発射する大型の銃だ。   稜弥はつかの間、呆気にとられていたが我に返ると、素早く美景を後退させる。  ジェラルドは切り傷を負っていたが、ものともせずにアノマロカリスに射撃した。飛び散る散弾が、アノマロカリスの身体を容赦なく砕いて地面に落下させた。  「任せろ! 飛びいでよ!」  スタイロンは、アンティークの伸縮式望遠鏡を使って、バッグの中から新たな合わせ鏡を紐解いた。たちまち、山羊頭の巨大な悪魔が現れ霊魔と対峙した。  「こりゃあスゴイ。怪獣大決戦だっ! とにかく僕の後に隠れていて美景さん」  稜弥が、美景を庇いながら言う。  霊魔の鞭がうなり、悪魔に集中しているすきに、ジェラルドは撃ち尽くしたショットガンを捨てて上着を大きく開く。  「ぬううっ」と、唸り声をあげてM60重機関銃とハーレーを腹自体から取り出した。  跨がりイグニッションを入れてエンジンをスタートさせる。  M60を片腕で楽々持ち上げると縦横に撃ちながら走りはじめた。  ハーレーの爆音に、響くM60の速射音。  飛び散る薬莢が湯気をあげる。
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