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悪魔は、霊魔とともにズタボロにされ、七・六ニミリの弾の餌食になった。
「おいおい! フレンドリーファイヤーだ!」
スタイロンは舌打ちして、凹面鏡と望遠鏡で、悪魔を戻した。
「こちらはネタ切れだ、ジェラルドはどうだ?」
スタイロンが、言う。
ジェラルドは、ハーレーを運転しながら霊魔に手榴弾を何度も投げつけていた。
爆裂音。
霊魔は、紙テープで器用に守り、本体のパセリが多少は吹き飛んだ程度。
「植物には神経が通っていないようだ。攻め方がマズイか。俺も、そろそろネタ切れになる」
ジェラルドが、ハーレーに乗ったまま言った。
「スタイロンさん」稜弥が言う。
「何か? 稜弥」
「あの怪物って、心は残っているんですか?」
「変なことをきくな。甲野和史の心は残っていない。あれは、和史のいわば魂を餌食にする仕掛け自体なのだ。外世界の超妖術の産物と言われている」
「魂があの怪物の源だとしたら、使えるかもしれない」
稜弥は、あのベランダから手に入れたスマホを取り出した。
「電池式の携帯充電器、嶋原さんは、もっている?」
「ええ、あるわ。でも、それは何?」
美景は、充電器を取り出し、渡す。
「嶋原さんの亡くなった先生のものだと思う」
稜弥はそう言って、充電器を受け取り接続した。充電のランプが光る。
「わたしが、力を使って読み取るわ」と、スマホを受け取る。
美景は、目をしばし瞑ると、涙を流した。
「せんせい……。でも、これなら。先生のこと、わたし、何も知らなかった。先生も、苦しんだのね」
美景は、スマホのスイッチを入れた。
ハンズフリーにして、留守電の音声を流す。
「かずふみ。おれだ、お父さんだ。養育費のことは改めて謝る。つらい思いをさせた。母さんは相変わらずだろう。おまえも一緒にいて、つらいなら、来ないか? お父さんのところに」
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